高性能・健康住宅「ファースの家」開発本部株式会社福地建装

住まいと電化の連載コラム

第7回/暖房の質(クオリティー)について

不快な暖房空間

暖房は空気を暖めて、暖かくなった空気を身体に当て暖房を行っています。これを対流暖房という人もいます。極めて当たり前の暖房行為なのですが、暖めた空気が身体に当たらないうちに逃げてしまったら、省エネ上で大きなロスとなります。
空気を暖めると暖かい空気は膨張して軽くなるため、部屋の天井付近に上昇してしまいます。少しでも隙間があれば、そこから外部に逃げ出し、逃げ出した同じ量の冷たい空気が侵入して来ます。侵入した冷たい空気は人の居る床付近に停滞します。寒さを感じるので更に暖房熱量を増加させる事になり、人の居ない天井付近と床下付近の温度差が10度を超える事も珍しくありません。この悪循環を阻止するため、家を気密にしてこの事象を抑えようとしているのです。したがって隙間の多い家は、暖房熱をたくさん消費するだけでなく、頭の上が暖かく、足元が寒い、不快な暖房空間を作ることになります。
室内での空気清浄を確保すれば、隙間の少ない気密空間ほど暖房上、快適で省エネになる事はいうまでもありません。

快適暖房とは

快適で省エネの暖房空間を確保するには、気密性をはかって隙間を少なくする事ですが、それには次の事が大きく関ってきます。
AとBの床付近の熱と隙間からの熱放出は前述した理由によるものです。Cの潜熱の確保とは水蒸気の保有する熱のことですが、冬の外気は極端に乾燥します。室内で発生した水蒸気は、温度計に表示されませんが大きな熱を保有しております。隙間があれば、この熱まで乾燥した外部にドンドン放出してしまいます。解り易くいえば、乾燥状態の空間では、人体が保有している水分を蒸発させて、体温を奪ってしまうからです。

輻射熱の存在

Dの輻射熱とは、物体から熱波長で放出する熱の事をいいます。暖房の快適性を数値で表示する温熱環境の快適度数(PMV値)は、気温(約20度)湿度(相対湿度約50%)空気の動き(毎秒約20cm)と輻射熱量(出来る限り多い方が良い)で割り出します。
この輻射熱量を見る目安は、室内の気温と、壁、床、天井、開口部の各部位の温度が同じになった時が最高の輻射熱量といえるのです。それぞれの部位の断熱性と気密性が大きくこの輻射熱量に関っています。特に部位に隙間が生ずれば、外気の影響を受けてその部分が低温になり、輻射熱量が低下して快適性を損なう要因ともなるのです。

輻射熱とは

輻射熱を熱の波長による熱伝達と前述しましたが、太陽の熱と同じような熱の伝達を行うといえば解り易いと思います。
対流暖房といわれる、空気を暖めて熱伝達を行う方法と大きく異なるのは、熱波長とは、熱波長が物体に当って初めてエネルギー変換を起こすといわれています。太陽熱も氷点下何百度ともいわれる宇宙空間を熱波長で地球に到達し地面や家、人の身体などに当って初めて暖かいという顕熱(温度計に表示される熱)になるといわれます。
最近、多く市販されるようになった、遠赤外線暖房器は、この熱波長を活用したものです。どんな暖房器でも熱を発すれば、周辺の空気を暖めますから、空気対流を発生させますが周辺の床や壁、家具なども暖まり、その暖まった部位から輻射熱として放出されます。
遠赤外線暖房器は、出来るだけ空気を暖めないで熱波長だけで熱伝達を行うように工夫されています。

室内の輻射熱を増やすには

輻射熱量を増大させるには、家の断熱と気密の性能を向上させる事が前提です。さらに断熱層の設置位置が大きな要素となります。
内断熱手法と外断熱手法をめぐって、多くの論争が行われています。温暖地においては温熱環境上、内断熱も外断熱も大きく関ってこないというものです。
確かに、私の研究でも熱損失計算においての温暖地でのヒートロスは極めて微量です。このあたりが論拠となっているものと思われますが、断熱層の位置によって輻射熱量のボリュームが大きく変動します。

寒冷地は暖房に温暖地は冷房に

氷点下になる寒冷地での内断熱と外断熱は、外部に面する柱や間柱、梁、桁などの面積がその20%にも及びます。断熱材(熱伝導率約0.03W/mK)と、それらの構造体(熱伝導率約0.13W/mK)の熱伝導率は、4倍以上にも及び、大きなヒートロスが確認できます。しかし、温暖地では冬場の暖房より夏場において、前述した太陽熱により、外壁温度が50度以上に及び、冷房負荷に大きな影響を与えます。
輻射熱は、暖房空間において暖気を輻射熱で放出し、冷房空間においては冷気を各部位から輻射熱で放出するからです。したがって、暖房と冷房(夏の清涼感)を考慮すれば、外断熱手法の方が有利であるという事は数値的にも証明出来ます。

外断熱の課題

断熱層を柱や間柱などの外側に配置する事を「外張り断熱」と言っています。内断熱の場合、柱、間柱などに直に外壁を固定出来ますが、外張り断熱は断熱層の外側に外壁材を固定するため、断熱材の支持力が問題となります。
支持力を持った断熱材としては、スチレンフォームやウレタンフォームなどの樹脂素材があります。
このプラスティック断熱材の泣き所は、燃えやすい、熱に弱い、痩せやすい、価格が高い、施工が難しいなどの課題を克服しなければなりません。
本誌誌面でも、現在実施されているグラスウールによる断熱手法のメリット、デメリットと、外張り断熱における課題の解決法を、実際に家を施工している立場から警鐘と提言を行って参りましたので、ここで改めて筆を加えません。しかし、住み手の立場に立ったら外張り断熱に移行すべきであると断言しておきます。
次回はオール電化に成すべき理由を記述します。