高性能・健康住宅「ファースの家」開発本部株式会社福地建装

住まいと電化の連載コラム

第14回/冷房対応住宅の設計施工ポイント

高気密、高断熱は厳寒地の工法か

隙間をなくして、断熱材を床、壁、天井に入れますと、確実に冬の寒さを防ぐ事ができることはいうまでもありません。しかし、寒さ対策だけを重視しますと、梅雨時や夏場の暑いときに様々な不具合が生じて参ります。
家の気密性を向上させる理由は、家の中の暖かさを隙間や換気から逃さないためで、断熱材を充填するのは、部材を通して熱を逃さないためです。今更いうまでもない事ですが、従来、この気密、断熱を行う理由は、寒さ対策が目的で行われて参りました。
冬期間において外の寒さを防ぐ効果は、理屈からいえば、夏期間において外の暑さを防ぐ効果も当然ながら期待できるわけです。しかしながら、高温多湿の日本の気候にフィットさせるためには、夏期間の暑さを防ぐための手法において、主に寒冷地で行われるような、高気密、高断熱の施工方法をそのまま行ったのでは、後日、大きな問題を起こす場合があります。

温暖地の高気密、高断熱施工

一般的な断熱方法は温暖地でも寒冷地でもグラスウールを断熱材として使用しています。
グラスウールは壁や床、天井の空隙に充填されて、グラスウールの中に閉じ込められた空気が静止して断熱効果を発揮します。特筆すべき点は、この静止したグラスウール内の空気が常に乾燥状態に保たれている事が100%前提です。
グラスウールを充填する空間に空隙ができますと、この部分の空気が対流を起こして断熱効果を低下させ、壁体内に低温部分が出来ます。この部分に周辺空気の水蒸気が凝縮して、内部結露や構成部材の含水量を増加させ、腐朽菌を発生させ、家を腐らす原因となる場合があります。
このような問題を防止するために、気密シートをグラスウールの部屋側から張り、外部側に通気層を作って、水蒸気を外部に放散させる手法が取られるようになりました。
しかし、家の造りや間取り、屋根や家の形状などによって、この気密シートの張り付け施工の難しさがあります。更に通気層は常に日射熱を受けて水蒸気を蒸発させる構成となる事が求められ、日射熱の当たらない部分は通気層がむしろ逆効果となる場合があります。
この対策としては、このシリーズで何回も記述してきましたのでここでは割愛します。

夏場対策の基本

特に性能の伴った高気密、高断熱住宅を北海道に建築して、夏場、暑くて過ごせないなどという苦情が非常に多いのです。北海道は緯度の関係で太陽高度が本州より低いため、日射熱が部屋の奥まで入り込みます。
また、冬場は、氷点下の低温が続くため、寒さ対策に重点を置き過ぎて、夏場の防暑対策が、疎かになっている事が要因です。
寒冷地といえども外気温が連日30度を超えるときもあります。温暖地に限らず、夏場の防暑対策をしっかり考慮した、設計段階からの対策が求められます。
基本的に寒冷地、温暖地に限らず、断熱材と気密施工の方法もさることながら、間取りや家の向きなどが夏場対策に重要な要素となります。

夏場対策の設計ポイント窓の大きさと位置

冬場に暖かい家を造るより、夏場に涼しく、冷房負荷の小さい家を造る方がはるかに難しいといえるでしょう。設計ポイントとしては、先ず、採光窓を出来るだけ南側に向けるように間取りを最初から考慮する事です。
更に窓は東西南北に風が抜けるような間取りにする事です。窓の大きさは、南面は出来るだけ大きく、北面にも相応の窓が必要です。東西面の窓は出来るだけ小さくする事です。

南面の窓は

南面の窓は、午前10時頃から午後2時頃まで、夏場の太陽高度が高くなるため、庇によって日射熱の進入を阻止できますし、冬場の低い太陽高度は庇の影響を受けずに部屋の奥まで日射熱を取り込むことが出来るからです。
また、昨今は窓ガラスに日射遮蔽機能を持ったものがかなり安価で採用できるようになりました。この遮蔽機能は、太陽高度が高くなりますと、角度がきつくなり、庇が無くともかなりの日射熱を反射遮蔽出来るからです。したがって南面窓を出来るだけ大きくする事が可能になるのです。

北面の窓は

夏場の南面の壁は日射熱の影響で60度以上にもなります。反面、北面の壁はほぼ外気温と同じ温度くらいで推移しています。
冷房器を取り付けない家においても、北面窓は開放する事で、この温度差によって自然に南面から北面に通気が抜けて、上昇させた室温を排出する大きな効果があります。

東西面の窓は

東西面の窓は、必要最小限の大きさにすべきです。これは太陽高度が一定でないために、庇や遮蔽機能(日射熱をほぼ完全に遮蔽するガラスも存在するが)で日射熱をコントロールする事が困難になるからです。
敷地の関係などでどうしても東西面に窓を取り付けざるを得ない場合がありますが、間取りを工夫しても東西面の窓を小さくすべきでしょう。

窓と間取り

部屋の間取りは、窓の位置を充分に配慮して設計するのが大きなポイントです。
間仕切りの戸を開けたら、南北に通気できるような部屋の配置が求められます。これは東西においても、間仕切り戸を開けたときに、東西からも通気が出来るようにすべきです。
これは東西の外壁面も午前と午後の外部周辺の温度がかなり異なり、上昇した室内温度を排出する効果が大きいからです。

窓と間取り

室内の間仕切りに使用するドアや引き戸は、開放したときに、出来るだけ、南北に風が抜ける位置に取り付けるべきです。また、廊下の上部には欄間を取り付けて、東西南北に通気がなされるような間取りが有効です。
特に、夏場の暑い時に留守にする場合は、家中の間仕切りドア、引き戸、障子や襖、欄間などを全部開放したままにして出かけますと、外部の窓を閉めたままでも、上昇気温が東西南北に移動するため、家の中の気温が上がり難く、快適な夏を過ごせます。
次回は家が完成するまでの施工現場の裏側を記述します。