高性能・健康住宅「ファースの家」開発本部株式会社福地建装

お知らせ

2010.10.04

北海道新聞 「朝の食卓」 2010.10.04掲載

「お子様一人旅」 福地脩悦

 飛行機の3席並びの窓側席に座った夫婦と思われる2人は、何故か不機嫌な顔です。機内誘導の仕方がまずいと客室乗務員にあたり飛ばしています。
 1席残った通路側の席に、乗務員に連れられた「お子様1人旅」の女の子が着席した時は、夫婦そろってなおさら嫌な顔をしていました。
 6歳くらいの女の子はとても愛くるしく気遣いのできる子供でした。
 飲み物サービスの時は、夫婦の前テーブルを出してあげ、身体をあけて飲み物を出しやすくしています。空になった夫婦の飲み物の紙コップを乗務員にさりげなく返し、その動作がとても自然でかわいいのです。
 最初は苦虫をかみつぶしたような顔だった奥さんの口からアリガトウ。少女は、いっそうこぼれるような笑顔を見せます。
 私は、夫婦の顔がしだいに明るくなる様子を、通路を挟んだ席から見ていました。
 絵本を見ている少女に夫婦は何やら話しかけて互いにほほ笑んでいます。純真な少女の笑顔は、無機質な時間を過ごしてきたと思われる夫婦にとって、和みの大切さを気付かせる機会になったでしょう。
 到着し、お子様一人旅の少女は、乗務員と手をつなぎ、飛行機から降りて行きます。女の子を名残惜しそうに見送る夫婦の顔は、たった1時間半前みたいな顔ではありません。