高性能・健康住宅「ファースの家」開発本部株式会社福地建装

NPO住宅110番・相談回答集

構造・建材について

断熱性や防音性、構造の強さなど

2021.09.06

断熱材施工のチェックポイントを教えてください

質問者/埼玉県・Nさん

 はじめまして。NPO住宅110番 の投稿記事と回答(アドバイス)には興味深いことが多く、参考にしたいと思っています。
 私は埼玉県在中で来年家の建て替えを計画しており、現在業者を決定して詳細設計に入る段階です。ひとつ気になっている点として、建築予定の建物の断熱材の施工があります。というのも、そこの業者さんは綿材系の断熱材を使わないことを売りにしているのですが、私どもの希望により、建築予定の家ではロックウールを使用してもらう予定だからです。
 もともと、外断熱が一番商品の会社で、その場合の断熱材は相応のしっかりとした(厚みのある)発泡ボードを使用します。しかし、私供は予算が及ばないためにそれは諦め、工法も内断熱を選択しました。業者からは、予算相応の発泡系のボード(厚みは3センチくらいだったと思いますが)で提案を受けたのですが、前述の発泡ボードに比べ頼りない感じがすることと、発泡系は火に弱いという点で、ロックウールにしてほしい、とお願いしました。※ロックウールを選んだのは、予算面と断熱性などの信頼性から相応かと思ったからです(他社から受けた提案がロックウールだったから、というのもあります)。
 綿材の施工について、業者さんは「もちろんん、ちゃんと施工します」 と言っているので信用はしているのですが、何分その業者にとっては数少ない施工例に入ってしまうので、少し心配が残るのも正直なところです。特に、綿材の断熱材は、施工方法によってその機能性が大きく分かれる印象があるので心配です。
 施主として、施工がはじまったときにどういう点を重点に施工の仕方や状態をチェックしていけばいいでしょうか。施主が参加できるようなロックウール施工方法の講習会などあれば参加したい気がしますが、そんなモノはないのでしょうか。無いにしても施工の際のチェックポイントをきちんと理解して、おかしいと思ったときに指摘できれば、と思うのですが、アドバイスをお願いいたします。
 たいへんに高度な質問に驚いております。ビルダーより建主さんのほうが多くの知識を得ているようです。綿材系の断熱材と記載されていますが、グラスウール断熱材のことと思われます。
 埼玉県のような地域では、北海道のような氷点下の日々が1ヵ月以上も続く地域と異なり、夏場対応を十分に意識しなければなりません。暖かさを求めるには気密性能をしっかりと高めることが肝心です。この場合、気密性能に伴った換気システムも合わせて導入する必要があります。換気量を多くし過ぎますと、夏の高温多湿、冬の低温乾燥の外気温に影響されて、気密性能を上げた意味合いが薄くなります。つまり、適切な換気量が求められるのです。
 夏場の冷房と暑さ対応は、断熱材の厚さがキーワードになります。断熱材を厚くする際に生ずる価格アップも全体的に見れば、わずかなものでしょう。この断熱材の充実は、冷暖房のランニングコストと冷暖房のクオリティにも大きく影響します。賢明な建主さんは、ここにお金を投入します。
 グラスウールにしてもロックウールにしても断熱材は、「乾燥した空気を静止させる」という基本前提で断熱性能を発揮いたします(発泡樹脂断熱材は気泡に閉じ込められたガスが断熱性能を発揮します)。つまり壁内、床下などの断熱箇所に空隙をつくらないことが前提となります。その点で考えますと、単体で詰め込むグラスウールは仰せのとおり、ちょっとした充填施工により空隙を生じさせる場合があります。この施工性を考えますと、専門業者が行う吹き込み充填施工のロックウールのほうが信頼性があるといえるでしょう。
 特に夏場において埼玉県の家の天井裏気温は、80℃くらいまで上昇します。天井断熱材が薄い場合、この熱が輻射熱で室内に浸入して構造体に蓄熱してしまいます。冷房省エネや快適な冷房空間を構築するには、天井裏の断熱材を北海道並みに厚くするに越したことはありません。この場合も断点なく厚さを確保できる吹き込みによるロックウールのほうが向いています。
 ロックウールの吹き込みはかなりの装置を必要としますし、飛散しないようにかなりの養生が伴いますので、建主さん対象の講習会は行われていないと思われます。ポイントは、充填部分に空隙をつくらないようにして「乾燥した空気を静止させる」という基本を、しっかりと貫徹することです。