高性能・健康住宅「ファースの家」開発本部株式会社福地建装

NPO住宅110番・相談回答集

契約・法規のトラブル

業者側のミスで発生した補修工事費用など

2010.11.11

全館空調

質問者/とまとさん(会社員・42歳・男)

 お世話になります。私の悩みは、景品表示法違反と思えるような資料や、まぎらわしい数々の説明のために誤認して決断してしまったことです。いまさら交換は大変ですし、変更もきかない。社会的責任を追及したいのですが、個人対大企業だから無理。仮に掲示法違反となったとしても、是正勧告のみ。こちらはもう取り返しがつかないのですが、こういう場合は、納得して契約したのだから客側のせいだということになり、どうしようもないことなのでしょうか?
 私は契約前の資料が現実にもあてはまると思って契約しました。正直、こういう販売方法が容認されていると、契約前に良いことを言っておけば、後はどうでもいいということになってしまいます。消費者は今後その会社にメンテナンスも依頼しないといけないし、今回の件についても、言った言わないで口論や失礼な態度も数々とられました。こちらも、温和な態度だと相手にされないので相当強く言わなくてはならず、神経がまいってしまいます。
 この企業と契約して一番感じたのは、結局、契約後は言いなりになっていないと良好な関係は保てず、消費者の立場は弱いものなのだということです。正直、家も全館空調もなくしてゼロからやり直したい。ただ家を建てる労力は相当なもので、二度と関わりたくはない。こういう会社はまた同じことをするでしょうから、二度と付き合いたくはありません。それでも、これからこのトラブルを起こした会社とは一生関わっていかなくてはならないので、気持ちが重いです。

例えば全館空調の場合、
●パンフレット類には、
「暖房20℃、冷房26℃で7万円(45坪)」
→特に温度条件まで記載があり信用。

「個別エアコンのほうがランニングコスト、電力料金がいいと思っていませんか?それは、まったくの誤解です!」
→根拠資料提示「省エネNO.1」「省エネ大賞受賞社のシステム」「お客さま実例値があり、最小月電力使用量が33kWh(換気動力低い)」

●口頭では、「最新です。24時間運転なので高速道路を一定走行しているようなもので燃費がいい。実際の運転ではCOPが高くなる。」という説明。

 他にもいろいろあるのですが、省エネ系の政府関係機関(以下、機関A)も参考にし、COPが高く、理由もはっきりしていて、費用対効果もかなり良かったので、目標としていた、機関Aの標準エネルギーをクリアできると判断しました(機関Aへのシステム提案書に費用対効果がいいデータを提出している)。正直信頼していた国の機関であった機関Aも、COPが基準を達成できていれば後は結果はどうでもいいという見解でした。

 要は、文面をそのまま信用したということです。個別より維持費がかからず、省エネ大賞受賞社の製品だから安心だと思い購入しました。しかし実態は、省エネ大賞を受賞していない数年前の製品(改造品?)のようで、電力使用量も運用してみたら数年前の数値としか思えませんでした。何度問い合わせても最新としか言わなかったですし、電力使用量も他のお客さまと同じだから問題ない。機械異常ではないとのことでした。さらに当初配った資料は正式ではないとか、一般的でお客様には該当しないなど、いろいろな理由がついてきました。言った言わないになると、「そんなことを言った覚えはない」と凄んできます。COPも、連続運転だから良くなると思ったら、実際はスペック以上にはならず、換気動力は当初実例参考値の10倍です。

 そもそも、(1)最新ではない(2004年製)、(2)お客さま平均値が年間7000kWh、(3)省エネ大賞受賞した製品ではない、と言ってくれれば、(1)だけでも、こちらで個別エアコン(この会社とは全館空調ありきのプランで進めたので、家は他社)を選択しました。他社にしたからといって、同じようなケースがあるかもしれませんが、そもそもこの会社は坪65万円以上にはならないと言っていました。
 今思えば、これも言葉の裏があり、お客さまの要望をすべて聞いたらオーバーしたと言ってくれればいいわけです。こちらは、坪65万円以下で考えていたので、坪70万円以上と正直に言ってくれた会社を初めから選びませんでした。結局は坪90万円になりました(見積提示時に、いろいろな坪数を増やしたりして、みせかけ上は坪45万円なんていうこともしていました)。
 この会社と契約した理由は、機関Aのシステム提案と全館空調が、個別エアコンより省エネで、省ランニングコストになると言ったからです。全館空調は後でこの会社が言ってきたとおり、契約前の提示資料は正式ではなく、一般論という見解です。実態は、そうはならないということを、会社側もほのめかしています。

 今思えばもっと、誠実な会社と契約すればよかったと思い大変後悔しています。省エネ目的で導入しており、まさか機関Aの申請と実態が倍以上も違うシステムを導入してしまうとは思いませんでした。毎日電力使用量を見て、ため息が出ます。
 大手ハウスメーカーが家を売る際には、とにかく営業担当者が契約を優先するため、建主さんが住んで後に発生するだろうと思われる、マイナス面の情報が伝わり難くなるのが実情のようです。
 ハウスメーカーに限らず、モノ売りに関わる最初のキャッチコピーは当然ながら、建主さんが興味を示すようなフレーズが用いられます。特に家づくりにおいては、冷暖房費用は一生涯にわたり付き纏うものです。営業トークの数値ではなく、住んだ後の状況をもっと詳細に告知すべきですが、現状は本件のようなトラブルがとても多いのが実態です。

 全館空調という表現ですが、全館を冷暖房と換気を行っているということなのでしょう。COPとは、エアコンのエネルギー消費効率のことをいいますが、昨今は年間エネルギー消費効率APFという単位が使用されるようになっています。質問文書にもありましたが、COPは限られた条件の一点を測定した数値ですが、APFは年間を通じた成績系数であり、COPよりAPFのほうが若干良い結果が出ます。
 このCOPやAPFは、エアコンに消費(入力)した電力の何倍のエネルギー(出力)を取り出したかの系数で、昔3.0から4.0だったものが、昨今は5.0とか6.0と性能の高いものが発売されるようになりました。
 しかし、このエアコンというのは、外部から10℃の熱を運んできて、室内気温にその10℃を加熱する機械です。つまり、暖房の場合、室温が5℃の場合、エアコン吹き出し温度が15℃です。家の断熱や気密性能が向上していると、早いうちに室温が吹き出し気温の15℃になり、15℃に10℃加算で25℃の暖房ができるようになります。
 また、エアコンの特性上、5℃以下から15℃程度まで気温を上げるには、COPがとても悪い稼働をしてしまい、家の性能が低ければこの稼働モードが長く続くことになります。
 これが15℃以上になるとカタログ表記のCOP数値よりもっと高い効率で稼働します。通年系数はこの平均をとった数値ですが、とにかく家の断熱、気密などに大きく起因しています。

 本件は、相当の金額を支払っているのですが、温熱環境や光熱費に関する部分に対して、どのようなやり取りを行ったかが、本文だけで判断がつきません。いずれにしても、仰せの通り売り手側はさまざまな措置を講じて責任回避を行ってくることが考えられます。
 また何とか機関云々とありますが基準数値を示す機関であり、性能を担保する機関ではありませんので、ユーザーさんが多くのことを期待するところではありません。
 省エネ大賞なるものも、販売しているラインナップのひとつがその大賞を受賞したのであり、そのハウスメーカーの商品がすべてそのような機能や性能であるかのごとく宣伝したというのでは、まさに過大広告と言われても致し方ないと思います。しかしながらそこを指摘しても実に上手に交わされてしまうことが多いのが実状のようです。
 家は建主さんが住み始めてからが本当の家づくりであり、そのような実態経営をしている工務店に発注すべきでした。

 本件の対応策としては、とにかく根気よくハウスメーカーに対して、質問者の意に沿うような家の性能に改善してもらうことが重要と思います。開口部を厚手のカーテンにするとか、開口部に断熱シートを張ったり、遮熱シートで冷房負荷を軽減するなどの対応策を講ずべきです。